この一週間は自宅の書斎と仕事場の大掃除をずっとやっている。研修医時代から溜まりにたまった膨大な資料や、もはや絶対に読まない教科書や、大量の雑誌や、10年以上前の委員会の議事録、全部処分してだいぶすっきりした。エスプレッソマシンの新しいカートリッジを揃えて、部長室のディフューザーを好みのものに入れ替え、過去と現在と未来が整理されて同居する空間を作っている。
こういう時にしか見返さないが、医者になって20年余り。ずっと大切に取っているものがある。それは患者さんやご家族から頂いた何百通もの手紙だ。嬉しい報告も、悲しい報告も、「ありがとう」とだけ書かれた紙切れも、すべて取ってある。特に研修医時代にもらったものには、今の自分の生き方に通ずることが書いてあったりする。患者さんに撮ってもらった写真とともに、すべて大切にファイリングしている。
これは自分にとって、どんな立派な賞よりも大切な宝物であり、同時にまた頑張ろうと力を与えてくれるものだ。少し初心に戻ろうかと思い、机の引き出しの奥にしまわれていたファイルを目に見える棚に移してみた。