サイトアイコン Junichi Shindoh, MD, PhD

2025.5.10

連休は風邪をひいて寝込んでいたので本格始動は今週からであるが
5月10日でこのサイトも満5年が経過し、
2020年のサイトの立ち上げとともに取り組んできたことを振り返って
少し所感を記そうと思う。

我々がやっている仕事というのは5年前や10年前と比べて
アプローチの仕方こそ違っているが
あまり代わり映えはしない。
病を抱える人々のために
何ができるかを考え、それを実行し、結果を待つ。
その繰り返しである。

虎の門病院はだいぶ長くなった。
ほぼ0の状態から人を育て、仲間を増やし、
世界を相手に戦える診療チームを作り上げることができた。
それが私の誇りでもある。

当科のスタッフはもちろんだが、肝臓内科、消化器内科、臨床腫瘍科、放射線治療科、病理部をはじめとする関連診療科、麻酔科やICUのスタッフ、そして何より病棟のナースたち。最後の砦としての我々の診療のクオリティを支えるのは、この「総合力」だ。だから自分達の携わる臨床に誇りを持ってほしい。ナースたちにはいつもそういう話をする。

2022年の春に1年後に消化器外科部長となることを言われていた私はいくつかの準備を始めていた。新しいセンターの構想もその一つだ。
当時作成したコンセプトビデオが世に出ることは結局なかったが、今見返してみても素晴らしい。
9割方の関連スタッフも、病棟も大きな期待を寄せていた。
これが実現するのならば我が国の医療にとって、難治癌に苦しむ患者さんにとって大きな変革となるはずであった。しかし最終的に実現はしなかった。

人を動かす、組織を動かすということは難しい。
体制が変わってもそこには限界があった。
だからそこはだいぶ昔に見切りをつけている。
またいつか新天地で一から始めようと、前からそう思っている。

一方、時間の経過は進歩ももたらした。
2020年というのは私のフラストレーションが限界に到達していた時期であり
それがこのサイトを立ち上げる原動力であったが、
我々の発信に端を発した「出会い」が救った患者さんは劇的に増えたように思う。
サイトを立ち上げたときに初めに入力した肝切除執刀総数は1,119件であったが、来週で1,800件に到達する。腹腔鏡やロボット支援下の手術を含む低侵襲肝切除もほぼ0から始まったが、現在では肝切除の約7割を低侵襲で行っている。これもおそらく日本で1,2を争う件数となった。
また肝胆膵外科全体の手術件数で言えば現在年間750件を超えているので、これは間違いなく日本でダントツトップである。昨年は死亡率0%も達成した。
日々進化を続けること、それが我々に課せられる使命でもある。

節目でやってきたことを数字で振り返ると結構頑張ってきたなと、
仲間の存在を有難く思う。
臨床は十分やった。
そう思える。

弟子が育ってくるとこういう質問をよくされる。
「先生が肝癌になったら誰に執刀してもらいますか?」

私の答えは「いない」である。
自分以外に執刀してもらいたい外科医は残念ながら私にはいない。
これは技術や経験ではなく診療に対するポリシーの問題である。
臨床で何を最も大切にしているか。それが自分の外科医としての最大の強みだと私は思っている。
だから自分は癌にならないよう努力しないといけない。
飲酒量も最近減らした。

この先に関して具体的なことはまだ未定である。
東大と共同研究を始めたり、他大学の客員教授に招聘されたり、研究や教育に関しては変わらずやりたいことを追求しているが、最終的にどこにユートピアを求めるかは未定である。

ただし、一つ言えることは
私も自分が活かされるべき場所を常に探している。
5年後はどうなっているだろうか。

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