肝臓のがんは、その種類によって治療の推奨や考え方が全く異なっています。肝細胞癌の場合は、外科的切除、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注、全身化学療法、放射線治療、肝移植などさまざまな治療法がありますが、「腺癌」とよばれる種類のがんに分類される肝内胆管癌や転移性肝癌の場合は基本的に手術か化学療法かの二択になります。これはがんの種類によって腫瘍の振る舞いや性質が異なっているため、どのような治療法に効果が期待できるかが違うためです。
 肝細胞癌には前述の通り様々な治療法がありますが、どれでも好きなものを選んでよいというわけではありません。腫瘍の大きさ、数、どこにあるか、肝臓の機能はどうかなど、腫瘍の条件や患者さんの状態によって選ぶべき治療の推奨がガイドラインで定められています。どの治療にも長所・短所があり、根治を期待できる治療とそうでない治療、腫瘍の成長を制御する力が強い治療と弱い治療、肝臓に与える負担が大きい治療とそうでない治療など、いろいろな違いがあります。
 巷のイカサマ広告にあるような夢の治療法は存在しません。肝臓のがんに対する治療法は科学的なエビデンスや医師の経験に基づき、個々の患者さんにとって最も適切と考えられる方法を単独または組み合わせて選択します。

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