肝臓は切除してもほぼもとの大きさに戻りますので、「理論的には」何度でも手術を行うことができます。肝細胞癌や大腸癌肝転移も術後の再発は高率ですが、切除可能なものをきちんと治療していくことによって、治癒もしくは長期生存が得られることは多くの臨床研究の結果から経験的に知られています。肝臓外科分野では再発に対する再切除は日常的によく行われる手術ですし、むしろそういう選択ができなければ予後の改善を期待することは困難です。
 一方、手術を行うと、創を治す過程で臓器の「癒着」が必ず起こります。2回目、3回目と手術を繰り返すたびに形成される癒着は強くなり、手術も難しくなります。また、切除した肝臓はほぼもとの大きさに戻りますが、肝臓の再生は切り口から新しい肝臓が生えてくるわけではなく、切除された形のまま一回り大きくなるイメージで起こります。したがって、肝臓の切除後は肝区域のバランスや位置、内部の血管配置などが変化し、それも再肝切除の技術的難易度を上げる原因となり得ます。
 このように再肝切除は繰り返すほど手術の難易度やリスクは上がりますが、がんを治癒に導くために必要なステップの一つであることは紛れもない事実ですので、再発しても再肝切除が可能で、それが望ましいと主治医が判断されているのであれば、それはむしろ幸運なことであり、手術を受けることをお勧めします。

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