原発性肝癌の代表である肝細胞癌は肝臓を構成するメインの細胞である肝細胞から発生する癌であり、ウイルス感染(B型肝炎、C型肝炎)、アルコール多飲、アフラトキシン(カビ毒)、脂肪肝、糖尿病、ヘモクロマトーシスなど肝臓の慢性炎症を基礎として発生してきます。肝細胞癌が正常な肝臓に発生することは極めてまれです。
 世界的な発生数でみると男性のがんの第5位、女性のがんの第7位であり、癌死の原因として男性で第2位、女性で第6位の難治がんの一つです。85%は東~東南アジア、サハラ以南のアフリカの途上国に患者が集中しており、先進国ではC型肝炎が多い日本のみが高率です。
 肝細胞癌の予防という意味では、慢性的な炎症の原因となるようなアルコール多飲や生活習慣病を避けるような生活をしていれば、健康な方が肝細胞癌になることはまずありませんが、B型肝炎やC型肝炎に感染している方の場合はその可能性を0にすることはできません。ただし、ウイルス治療を行うことで肝臓の慢性炎症を抑制し、発癌リスクを抑えることはできますので、ウイルス性肝炎が指摘されている患者さんは、必要に応じてウイルス治療を行い、早期発見・早期治療のための定期的な血液検査やがんのスクリーニングが望まれます。内科の外来で20年以上肝炎治療を継続してきた患者さんが、定期健診で初めて肝癌が見つかり、外科に紹介されてくるということはよく経験します。

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