RFAは体外からエコーガイド下に腫瘍を直接穿刺し、がんを焼いてしまう治療であり、手術と比較すれば体への負担が少ないというメリットがあります。一方、腫瘍が大きくなるとRFAで焼灼できる範囲を超え、腫瘍を完全に焼灼することが難しくなってきますので、すべての肝細胞癌に対してRFAができるわけではありません。RFAで確実な治療ができるのは2-3cm以下の小肝癌であるということを知っておく必要があります。
小さな肝癌に対して手術の方が有利か、RFAの方が有利かという議論は昔からあり、この問いに一定の結論を出すことを目的として、東京大学肝胆膵外科が中心となり、「SURF試験」という臨床試験が行われました。これは、3cm以下 3個以下の比較的小さな肝癌に対して手術とRFAの効果を比較した試験です。結果から言えば、手術を行った場合とRFAを行った場合で無再発生存率や全生存率に差は認められませんでした。したがって小さい肝細胞癌に対する治療効果はRFAでも手術でもほぼ同等であるということが分かります。
ただし、臨床試験で成績が同等だったからといって3cm以下、3個以下の肝細胞癌に対しては手術とRFAのどちらを選んでもよいというわけではありません(ここが解釈の難しいポイントです)。身体への負担の少なさを考えるとRFAの方が優れているように思えますが、この試験に組み入れられた症例はほとんどが腫瘍数1個の症例で、腫瘍最大径の中央値も1.7cmと小さかったことから、腫瘍が複数個ある場合や腫瘍径が2cmを超えてくるような症例においても本当に効果は同じと言えるかについては依然クエスチョンマークがつくためです。
「腫瘍径2cm」というのは腫瘍の振る舞いを予測する大きな目安の一つで、肝細胞癌のステージ分類でもこれを採用しています。先に述べたように、2cmを超える肝癌の場合、微小転移が散っている可能性がありますので、初発の肝癌の場合、腫瘍だけをくりぬいてくるような切除(非系統的切除)は術後の再発リスクが高いとされます。RFAの場合も、治療範囲はこうした切除の方法とほぼ変わらないわけですし、2cmを超えるサイズの腫瘍に対してRFAを行った場合は再発が起こりやすいことが実際に知られています。
腫瘍の数や大きさは治療効果や予後を予測する上で重要な因子ですが、実際の臨床ではそうした部分に現れない腫瘍の生物学的な悪性度も考慮する必要があります。例えば、腫瘍の「形」、腫瘍の造影パターン、腫瘍マーカーの数値、PET検査での集積の有無など、腫瘍の血管への入り込みやすさや生物学的な悪性度を反映するさまざまな因子も考慮しながら、これは切除の方が有利、これはRFAでも大丈夫、といった判断を臨床現場では行っています。ですから主治医の好みや患者さんの希望だけを優先して治療法は決められないことに留意が必要です。