日本の肝癌治療は各分野で世界をリードしてきた歴史もあり、欧米では手術しないような進行癌でもある程度のところまでは切除を行いますし、肺や副腎、リンパ節など肝臓の外に転移がみられても、条件によっては切除で治癒が得られるケースも存在しています。
 進行癌になってしまうと抗がん剤しか治療法がないというわけではなく、これまで述べてきたように肝細胞癌はさまざまな治療選択肢があり、現在何が臨床上問題となっている部分かを吟味し、どの治療法でそこに対処するか、さまざまな治療の組み合わせによって最善の治療効果を企図する「集学的治療」が重要なポイントになります。
 Stage IIIを超えてしまったものはどのような条件でもStage IVですから、同じStage IVでも症例によって腫瘍の条件にはグラデーションがあり、治る人もいれば治らない人もいます。ですから「進行癌」というくくりではなく、何が問題で進行癌と判断されているのかによって治療選択肢は変わってきます。
最近は、近年使えるようになった様々な薬物治療やTACEなどを組み合わせながら、これまで手術不可能な患者さんを救うことができないか、などさまざまな取り組みがなされていますし、そうした集学的な治療によって実際に根治的な手術にたどり着ける人も少なからず存在しています。肝細胞癌は内科医だけいても外科医だけいても治療できる疾患ではありません。進行癌のケースでは場合によってはセカンドオピニオンの利用も検討する価値があると思います。

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