「肝門部」とは肝臓に流入する血管や肝臓から流出する胆管が集まった部分のことを言います。この部分には重要な血管が3次元的に複雑に走行しているため、同部に生じた癌の治療では図13のように肝臓を大きく切除する必要があります。胆管癌は肝臓がんとは異なり肝臓そのものに疾患があるわけではありませんが、癌による胆管の閉塞で黄疸が生じているケースでは肝臓に大きな負担がかかっており機能が落ちているため、術後肝不全リスクの高い手術になります。
 そのため症例によっては術前に切除する側の血管(門脈)を詰めておき、残す側の肝臓を肥大させた上で安全に切除する方法(門脈塞栓術)を選択します。肝門部胆管癌は切除にも高度の技術が必要ですが、周術期死亡率が高く、術後管理にも経験とマンパワーが必要とされるため、経験のある専門施設で治療を受けることが望ましい病態です。

図13. 肝門部胆管癌、胆嚢癌の切除範囲

書籍公開目次へもどる