肝門部領域胆管癌の手術では通常、肝臓の右側大きく切除します。この時、残る左側の肝臓に十分な大きさがあればよいですが、人によっては左肝が非常に小さい方がおり、右肝切除を行った場合に安全切除限界を超えてしまうケースがあります。その場合、将来的に切除する側の肝臓、ここでは右側の肝臓を栄養している門脈の枝を詰めてせき止める処置を行います。これを「門脈塞栓術」といいます(図14)。門脈の右枝がせき止められてしまうと、門脈の血液はすべて左側の肝臓に流れ込むことになります。そうすると数週間の経過で右側の肝臓が萎縮し、代償的に左側の肝臓が肥大します。肝切除の安全性を決定するのは残る肝臓の「割合」ですので、例えばはじめ右肝80%、左肝20%であったものが、門脈塞栓術によって4週間後に右肝60%、左肝40%になったとすれば安全に右肝切除ができるということになります。

図14. 門脈塞栓術
門脈右枝を詰める(塞栓する)と門脈を流れる血液はすべて左側の枝から左肝へ流れ込む。すると門脈血が来ない右肝は萎縮し、代償性に左肝が肥大する。左肝が小さすぎるために右肝切除が危険と判断されたケースでもこのように予定残肝を術前に大きくしておくことで手術が安全に施行できるようになる。

書籍公開目次へもどる