下部胆管は膵臓の内部を走行している胆管の下流の部分です。最終的には十二指腸乳頭部という部分で十二指腸に開口しています。下部胆管あるいは十二指腸乳頭部に発生した癌の手術は「膵頭十二指腸切除術」という手術が必要になります。十二指腸、膵頭部、下部胆管は互いに分離することはできず、下部胆管癌、十二指腸乳頭部癌、膵頭部癌、十二指腸癌など、この領域にできた癌の切除はこれらの臓器を一塊に摘出する同じ手術が必要となります(図15)。膵頭十二指腸切除術は切除のみならず消化管をつなぎなおす複雑な手技が必要となりますので、腹部の手術の中では最も大掛かりな手術の一つです。我々肝胆膵領域の専門医にとっては日常的な手術ですが、膵頭十二指腸切除術が独力で安全に執刀できるようになれば消化器外科医としては一人前とみなされます。

 胆管癌は肝門部胆管、上部胆管、中部胆管、下部胆管、乳頭部と下流に行くにしたがって、がんが発生した場合に早く症状が出やすいという特徴があります。そのため下部胆管癌や十二指腸乳頭部癌は比較的早い段階で見つかることが多く、きちんとした切除が行われれば、比較的良好な予後が期待できます。膵頭十二指腸切除術の詳細は膵臓の項で説明を行いますのでそちらを参照ください。

図15. 下部胆管癌・十二指腸乳頭部癌の切除範囲

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