胆嚢癌の手術は、胆嚢癌がどこまで進んでいるかによって大きく異なってきます。ステージをあらわすTNM分類のT因子は、胆嚢内腔の粘膜に発生した癌が、胆嚢壁を垂直方向にどこまで深く進展しているかによって、T1 粘膜・筋層、T2 漿膜下層、T3 漿膜・肝臓、T4周囲臓器のように分類します。T1の胆嚢癌は画像で発見することが困難ですが、胆嚢を摘出するだけでほぼ治癒するケースが大半ですので、例えば胆石症などで偶然T1胆嚢癌が見つかったケースでは、そのまま5年間慎重に経過観察します。一方、T2以上の胆嚢癌では胆嚢の切除だけでは不十分で、がんの微小進展の可能性を考えて胆嚢が付着している部分の肝臓をある程度一緒に切除してくる必要があり、また系統的なリンパ節郭清が必要となりますのでそれなりの規模の手術が必要です。他の良性疾患で摘出された胆嚢でT2胆嚢癌が発見された場合は、胆嚢が付着していた肝臓を一部削りリンパ節を切除してくるような追加切除が必要になります。現在T2胆嚢癌の一部までは腹腔鏡下での手術ができるようにはなってきていますが、胆嚢癌は膵癌と並んで悪性度の高い癌であり、術式の選択は根治性を優先して考えなくてはいけません。胆嚢癌の再発する場合は、ほとんどがリンパ節や肝臓ですが、胆嚢は手術で摘出してしまうため、再発は定義上すべてStage IVになります。したがって、肝細胞癌や転移性肝癌のように再発したから再切除という考え方はできず、胆嚢癌に対する手術は一発勝負になります。ですから根治性が担保できる手術の方法をとることが重要です。