膵癌(浸潤性膵管癌)はがんの中で最も予後が悪い癌の一つです。これは早期発見が難しいこと、ほとんどの症例で進行が極めて速いこと、周囲のリンパ節への転移や腹膜播種を起こしやすいこと、効果の高い抗癌剤が少ないこと、手術単独で治癒を目指すことが難しいことなど様々な要因によるものです。
膵臓がんの一部には「前がん病変(がんの発生母地となる良性病変)」が存在していますが、膵臓がんは進行しなければ症状が出にくいことが多く、ほとんどのケースは進行癌で見つかり、そもそも手術の対象となるケースが20%前後と少ないのが現状です。がんは「エラー」を起こした細胞から発生するものですので年齢が高くなるほど発生率は一般的に上がる傾向にありますが、膵臓がんは高齢の方ばかりではなくしばしば若年者でも見つかることがあり、私も10年度ほど前に同級生を30代で亡くしています。膵臓は私の専門の一つでもありますが、外科医として膵臓がんとどう対峙すべきであるか。こうすれば絶対に治癒に導ける、こうすればもっと多くの患者さんを救えるはず、という確立した方法を自分の中にまだ持てていませんので、私自身にとっても現在進行形のテーマです。