まず膵癌の危険因子として最も重要なのは「家族歴」です。膵癌患者の3-9%は膵癌の家族歴があり、親子・兄弟姉妹に2人以上の膵癌患者がいる家族性膵癌家系の場合、膵癌発症リスクは一般の方の約7倍とされます。そうした方は注意が必要です。また、膵癌となる方の25%前後で糖尿病が併存しており、それに肥満が加わるとさらに膵癌になるリスクが高くなるとされています。喫煙は様々な癌のリスクを上昇させますが、膵癌にも関連しています。
後の各論で触れますが、膵癌がんの「前がん病変」として注意すべきものに、膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)という病気があります。これは膵管の分枝や主膵管の内腔を覆う細胞が腫瘍化して粘液を産生し、膵臓にのう胞を形成したり、主膵管を太くしたりする疾患ですが、がんの発生母地になることが知られています。

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