膵癌の手術適応は肉眼的に根治切除が可能なケースに限られ、他の臓器に転移しているようなstage IVのケースは通常切除適応にはなりません。膵癌は大腸癌のようにStage IVでも治癒に導ける癌ではありませんので、例えば開腹時に米粒大の腹膜播種が1つ見つかっただけでも根治は不可能として手術を中止します(手術してもすぐに再発し、手術が予後改善にはつながりません)。また技術的な面だけで「とれる」「とれない」という判断で手術をしても、顕微鏡的な腫瘍の進行により治癒せしめることが難しいがんですので、前述のR、BR、URの分類に基づき、どのような術前治療を行い、どのくらい状況が改善したら切除を検討するのか、どの範囲を切除し、術後の補助療法をどう考えるのかなど、戦局を判断し、文字通り「集学的」な治療を行うことで長期生存を目指します。こうした様々なステップを乗り越えることができなければ膵癌の根治を目指すことはやはり難しいと考えなくてはいけません。

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