インスリノーマとは過剰なホルモンを産生する機能性NENのうち、インスリンをつくるタイプのNENのことを指します。インスリンは血糖を下げるホルモンですのでこれが過剰に分泌されることによって、低血糖発作が起こり、視覚障害、意識障害、異常行動などが見られます。
診断のアルゴリズムは複雑ですのでここでは触れませんが、治療は手術での摘出が主体です。ただし、腫瘍が多発していたり、腫瘍が小さすぎて術中に確認できない(=どこを切除すればよいか分からない)場合も多く見られるため、しばしば治療に難渋します。
切除ができない場合は、ホルモン分泌を抑える薬物療法(ソマトスタチンアナログ)と低血糖に対するブドウ糖補充療法がメインとなります。ソマトスタチンアナログはガストリノーマ、VIPオーマ、グルカゴノーマなど他のホルモンを産生する機能性NENには効きやすいとされますが、インスリノーマの場合はしばしば効きづらいケースを認めます。過剰なホルモン分泌を行っている腫瘍が存在する部位を検査特定し、同部の切除で症状の改善を図ることがやはり治療のメインとなります。

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