肝硬変はその原因によらず肝細胞癌の発生母地となりますので、「肝臓を大切にする」という生活が必要となります。飲酒は肝硬変の進行、発がんリスクの上昇につながりますので、アルコール性肝障害であるかどうかにかかわらず禁酒する必要があります。またB型肝炎やC型肝炎が原因の場合、必要に応じてウイルス治療を受け、ウイルス量を低減させておくことが以後の発がんリスクの低減や、肝臓自体の機能の改善に役立つことが知られています。
 肝硬変も進行すると硬くなった肝臓に門脈からの血液が入りにくくなり、さまざまなバイパス路を通って血液が心臓に戻ろうとします。胃や食道を伝う血液の流路が拡張すると慢性的な胃炎を起こしたり、食道の壁の静脈が拡張する「食道静脈瘤」という病態を引き起こします。食道静脈瘤はひどくなって破裂すると約50%が死亡するとされ、入院中に起こした場合でも助けられないケースがあります。したがって肝硬変が診断された場合、定期的に内視鏡検査を受け、食道静脈瘤の有無や程度をチェックし、悪化が見られる場合は破裂予防の治療が必要となります。
 一度肝硬変に至った肝臓が元の正常な肝臓に戻ることはありません。肝硬変に至る過程には何十年にもわたる慢性的な肝臓の炎症が存在しています。炎症で破壊された肝臓の組織がそれを治すことを繰り返すうちに、次第に瘢痕組織が蓄積し肝臓が硬くなっていきます。肝臓にかさぶたが沢山出来て硬くなっていくとイメージしてください。慢性炎症が起こっている組織というのは次々に壊される組織を治癒するために細胞が常に分裂を繰り返していますのでその過程で遺伝子に傷が蓄積し、がんが発生しやすくなります。潰瘍性大腸炎からの大腸癌の発生、膵・胆管合流異常症からの胆道癌の発生などもこうした慢性炎症からの発がんです。ですから肝硬変に至った肝臓というのは、がんの予備段階にあるがんの「芽」が無数に存在していると考えておく必要があります。したがって、定期的に採血で肝細胞癌の腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)をチェックしたり、超音波検査で肝臓に腫瘤が見られないかをスクリーニングすることが重要となってきます。肝硬変の治療は「消化器内科」が専門の担当部署になります。

書籍公開目次へもどる