Stage IIIとStage IIの大腸癌の一部は再発リスクが高く、術後の補助化学療法を追加することが一般的です。手術を受けた際に「転移なし」という評価は、あくまで画像で明らかな転移が認められないということであって、肝臓や肺などに顕微鏡的な転移が存在している場合は分かりません。ですから一定数の方は転移巣が見えていないだけで実はStage IVである可能性があるということです。そのためこれらの集団では術後補助化学療法が推奨されています。もちろん補助化学療法を行ったから癌が再発しなくなるということではありませんので患者さんの希望で補助療法はなしで様子をみるということも行われますが、Stage III大腸癌では術後補助療法を行った方が再発リスクの低減、再発までの期間の延長の効果があることが臨床試験でエビデンスとして示されていますので、世界的にはこれが標準的な治療となっています。
ここで用いられる抗がん剤はオキサリプラチンやカペシタビンといった比較的強い抗がん剤です。肝臓の章で出てきたStage IV(大腸癌肝転移)の場合は術後にこれらの強い薬剤を使うことは最近は少なく、マイルドな内服の抗がん剤での補助療法がよく行われています。Stage IVの方が進行しているのに抗がん剤はマイルドでよいと言われるとおかしな印象を受けますが、Stage IVで手術している患者さんというのは、すでにStage IVであることが確定しており、そこまでの診療経過から根治の可能性が高いケースに絞られていますので、見えていないがん細胞がまだある可能性が高いと想定して行われるStage III大腸癌の術後補助療法と、がん細胞がもう残っていない可能性が高いと考えて行われるStage IVの大腸癌の術後補助療法では考え方が違うためです。抗がん剤治療はそこで得られる利益と治療の副作用との兼ね合いで適応を考えるべきものですので、主治医の先生とよく相談の上、リスクとベネフィットを鑑みて決めてください。

書籍公開目次へもどる