がんの治療において最も大切なことは、主治医を信頼し、主治医が提示する治療法に納得して治療を受けることができるかどうかです。しかし、必ずしも自分の希望する治療法が提示されるわけではないかもしれません。主治医の話を聞いて自分の中で違和感がある場合は、セカンドオピニオンを受けてみるということも選択肢の一つです。多くの総合病院においては専門医によるセカンドオピニオン外来を設けていると思います。そうした制度を利用するということは納得して治療を受ける上で時には重要となります。
ただし、セカンドオピニオンには落とし穴もあることも知らなくてはいけません。セカンドオピニオンというのは、あくまで「第二の意見」を聞くということです。基本的には今の主治医の考え方とどう違うのか、第二の意見を聴いた上で主治医の診療方針を受け入れるのか、他の治療法を提示してくれる医師のところに紹介をしてもらうのか、その判断の目安にするものです。
手術は無理だと言われている患者さんが、セカンドオピニオン先では手術はできますと言われるかもしれません。しかし、その先生がどのようなポリシーをもって、どのような理論的背景に基づきそうした治療方針を提示できるのか、そこはよく話を聞いてから考える必要があります。「後医は名医」という言葉があります。後に関わる医療者ほどそれまでの経過や前回の治療の結果を知っていますから、より適切な臨床判断ができるのは当然であり、名医に見えてしまうものです。医者もそれぞれ経験やポリシーが違いますから、なぜそのような治療法がベストであると考えるのかを説明してもらいましょう。そして自分にとってしっくりくる考え方はどちらか。その場で結論を出すのではなく、家に帰ってから冷静に考えてみることが重要です。
またこれもたまにあるケースですが、100%納得できる回答を求めて様々な病院をめぐるのはあまりお勧めできません。有名病院をめぐりドクターショッピングをする方は一般的に予後不良です。がんには時間的な制約があります。何件も病院を回って紹介をしてもらって手術が決まったとしてもすぐに治療ができるわけではありません。セカンドオピニオンとはあくまで「第二の意見」です。がんの治療というものはある程度の標準的な考え方や医療の常識というものがありますから、病院によって治療方針が180度違うということはまずありません。医師の間に違いがあるとするならばそれはがんの治療法ではなく、医療に対する想いとセンス、経験値。それだけです。手術の腕にランキングなどありません。自分がパートナーとして主治医を信頼できるか。それが最も大切です。