具体的体的な医療費は疾患の種類、手術の種類、合併症の有無、抗がん剤投与の必要性など患者さんごとに様々なパターンがありますので一概には言えませんが、日本に住んでいる限り医療費に関してはそこまで心配する必要はありません。
肝臓・胆道・膵臓の手術は高難度手術のですので腹部の手術の中でも高額です。例えば肝臓の手術の技術料についての保険点数を見てみましょう(表4)。診療報酬の算定の仕方は複雑ですので本書で解説は行いませんが、日本の医療保険制度はこの「保険点数」というものをもとに診療報酬を算定していきます。保険点数とは1点10円に相当しますので、例えば腹腔鏡下で左肝切除や右肝切除を行うと「2区域切除」ということで152,440点。手術技術料だけで152万4400円ということになります。

これに加えて麻酔管理料や、ICUの加算、通常の入院費、投薬費その他が足されていきますので、腹腔鏡下肝切除術を行った場合は、入院中の医療費だけで数百万円ということになります。さらに手術に加えて抗がん剤治療などが加わると1回あたり数十万円かかりますので、医療費はさらに高額になっていきます。
ただし、通常の窓口負担は通常3割ですので患者さん自身への請求は1回の手術入院で数十万円程度が一般的だと思います。さらに1か月に支払う医療費の負担額が限度を超えると、「高額医療費制度」を利用することで払い戻しを受けることができますので、最終的な持ち出しとしては入院費を合わせてせいぜい十数万円ということが多いと考えられます。ですからがんになってしまったら医療費が高額すぎて支払いのために家を売らないといけないとか、米国のような悲惨なことは日本では起こり得ません。医療費の負担の相談は各病院のソーシャルワーカーが窓口として対応してくれるはずです。