肝臓・胆道・膵臓のがんが難治がんであるのは前述の通り手術が難しいからというのもありますが、そもそも他の臓器に発生したがんと比較してがんの悪性度が高く、進展様式も複雑だからということが第一に挙げられます。肝臓・胆道・膵臓は消化管のように単純な管腔構造をしておらず、複雑な血管網やリンパ管網に囲まれており、がんの転移進展様式自体がそもそも複雑です。手術をする場合も周囲に残さなくてはいけない重要な解剖構造が多いため、手術の方法にも制約があり、がんの根治だけを考えて周りの臓器や血管までごっそり切除してくることができないという問題があります。したがって、胃がんや大腸がんの手術と比べて顕微鏡レベルでがん細胞が残ってしまうリスクが高いということになります。さらに問題なのは、肝胆膵がんに効果がある抗がん剤がそれほど多くないという点です。例えば大腸癌と比較すると肝胆膵がんに対して腫瘍を劇的に縮小させるほどのパワーを持った抗がん剤はありません。このように様々な要因によりがんを根治に導くことが相対的に難しい、だから肝胆膵がんは難治がんであるということになります。したがって、肝胆膵がんの治療は胃がんや大腸がんの手術のようにどこの病院でもできるものではなく、特に進行してしまった場合は大学病院やがん専門病院のような大きな施設での治療が必要となるケースがしばしばあります。

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