前述の通り、肝胆膵がんの手術は開腹手術でも一般に難しく、肝胆膵がん領域での腹腔鏡手術は他の臓器と比べるとだいぶ遅れて始まりました。しかし医療技術の発展は目覚ましく、近年では肝臓や膵臓のがんの手術でも腹腔鏡下で切除を行うことができるケースは増えてきています。もちろんすべての手術が腹腔鏡でできるわけではありませんが、がんの根治性と手術の安全性が確保できるケースでは、なるべく身体への負担の少ない手術を選択するようになってきています。
 ただし、数年前に某施設で腹腔鏡下手術をめぐる手術死亡が社会的問題となったように、肝胆膵がんに対する腹腔鏡下手術は高度な技能を要し、それなりのリスクがある手術です。したがって、外科治療の安全性の確保のために学会を上げた取り組みがなされています。肝臓の表面を少し削ってくれば済むような比較的難易度の低い手術であれば大抵の総合病院では施行可能ですが、亜区域以上の肝切除や膵頭部腫瘍の切除のように難易度の高い腹腔鏡手術やロボット支援下の手術は、一定の施設基準(専門医の数、年間の手術件数など)を満たした病院でなければ保険診療で行えないことになっています。ですから肝胆膵がんに対する腹腔鏡下手術はどこの病院でも行えるわけではありません。

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