肝門部胆管癌
「肝門部」とは肝臓に流入する血管や肝臓から流出する胆管が集まった部分のことを言います。この部分には重要な血管が3次元的に複雑に走行しているため、同部に生じた癌の治療では図のように肝臓を大きく切除する必要があります。胆管癌では肝臓がんとは異なり肝臓そのものに疾患があるわけではありませんが、癌による胆管の閉塞で黄疸が生じているケースでは肝臓に大きな負担がかかっており機能が落ちているため、術後肝不全リスクの高い手術になります。
そのため症例によっては術前に切除する側の血管(門脈)を詰めておき、残す側の肝臓を肥大させた上で安全に切除する方法(門脈塞栓術)を選択します。肝門部胆管癌は切除にも高度の技術が必要ですが、術後管理にもマンパワーと経験が必要とされるため、経験のある専門施設で治療を受けることが望ましい病態です。
胆のう癌
胆のうは胆管を流れる胆汁を一次的に貯留しておく袋ような構造物です。胆のう癌は膵癌とならび悪性度が高い癌であるため、胆管癌とは治療の考え方が異なります。胆のうの壁は非常に薄いことや、肝臓に付着しているというその特徴から容易に進行癌となってしまい、肝臓やリンパ節に転移をきたすため、手術ではほとんどの場合、肝臓の一部を一緒に切除する必要があります。また術後に化学療法が必要となるケースが多く存在します。
広範囲胆管癌
胆道は肝門部、上部胆管、中部胆管、下部胆管、乳頭部、胆嚢といくつかの領域に分けられますが、2領域以上に広がる胆管癌を「広範囲胆管癌」と言います。胆管癌は手術以外に根治的治療がなく、完全切除が可能であれば根治が期待できる症例が多く存在しますので、切除の可能性を常に考えながら治療計画を練ります。しかし、癌の進展範囲によっては肝臓と膵臓を同時切除する必要があったり、動脈、門脈などの血管を合併切除・再建する必要が出てきますので、非常に難易度の高い手術が求められます。特に胆管の上流側から発生した広範囲胆管癌の治療は癌の進展範囲の予測、黄疸の存在、合併する胆管の炎症の存在など手術がうまくいったとしても予期せぬ合併症を術後に来すことが多く、診療チームの総合力が問われますので、実績のある施設での治療が望ましいと言えます。