切除ができる状況であれば切除が望ましいと考えます。大腸癌肝転移はここぞというタイミングで切除を行ったとしても再発が多い病態です。しかし術後の再発は手術の失敗ではなく予想される経過の一つです。
「再発」とはがんが新しく発生するものではなく、がんの大元である原発巣(大腸癌の本態)を切除した時点ですでにそこにあったものが時間を経て目に見える大きさにまで育ってきたものです。ですから大腸癌の原発巣の切除から時間が経っていれば経っているほど、目に見えない癌が残っている確率は低くなります。つまり、最終的に「根治」が得られる可能性が上がっていきます。
実際肝臓に何個転移していたかを教えてくれるのは「時間」です。Q30で触れたように、初診時の状態では、この「時間」をまだ長く見ることができていませんので未来は判断できませんし、そこで患者さんの運命や治療を決めつけてしまうのは誤りです。私個人の経験として、複数個の肝転移巣がある患者さんで最終的に治癒が得られた症例のうち半数以上の方は肝臓を2回以上切除しています。再発が起こっても切除できるものを積極的に再切除することで予後が伸びるというのは我々肝臓外科医の昔からの実感ですし、そうしたポリシーでやっていくと、転移巣30個くらいまでの症例では治癒しているケースが私のシリーズでは存在しています。
大腸癌肝転移は再発が認められても、切除できるものを繰り返し治療していくことで予後の延長につながることが報告されています(15)。大腸癌肝転移の再発は術後2年以内に集中しており、再発がみられても積極的な治療によってここを乗り切れることが、治癒や長期生存を目指す上でクリアすべき一つの目標となります。
文献
15) Oba M, et al. Discrepancy between recurrence-free survival and overall survival in patients with resectable colorectal liver metastases: a potential surrogate endpoint for time to surgical failure. Ann Surg Oncol 2014;21(6):1817-1824.